
自分の趣向にはまず合わないだろうという妙な確信はあったものの、先日からスタートしたテレビドラマ「アイムホーム」を時間遅れで見てみた。
確信していながらとりあえず録画はしていたのは、もう20年近く前になる原作の漫画をリアルタイムで読んでいて、その独特の世界に魅きこまれていたから。作者の石坂啓さんは今や週刊金曜日の編集委員を務めるなど社会派の作家として知られるが、この漫画が連載された頃はイメージとしてややおちゃらけたものがあり、作風のいきなりの変化に当時驚いた記憶がある。
ついでだからと、上下とも持っている単行本を書棚から久々に取り出してみた。1999年の初版本。今回のテレビドラマにあわせて再刊されたものは表紙デザインが大きく変わっているらしい。
で、肝心のテレビドラマのほう。
やはり私の感覚には外れ。キムタクとか上戸彩とかビッグネームが出てくるものにはありがちなところで、予想通りであった。テンポがゆっくりしているのに原作にあったどこか深く考えさせる余韻みたいなものはなくなり、ことさらミステリーという言葉が強調されて出てくるのもテレビ的といえばそうなのだが、原作からすると安っぽい感じがしなくない。
以前、松本清張をひきあいに「改訂版の魅力」について書いたことがある。漫画をテレビドラマ化する際も当然それに合わせた改訂が必要だから、要は改訂の仕方が好みとは遠かったわけだ。しかし逆にキムタクファンにすれば新しい役柄で新境地もみせているし、ナレーションも含めて前面に押し出しての登場でこれでいいのかもしれない。
改訂という観点でいえば、主人公が記憶を失う理由が、原作では「七輪でモチを焼いているときの一酸化炭素中毒(による後遺症)」だったがドラマでは工場での爆発事故になっていた。七輪のモチ焼きには物語としての意味があったから、そこを変えたということは爆発事故は単に偶発的なものでなく、おそらく違う意味がこれから付加されてくるのだろう。作り手視線だと改訂へのそういった興味はなくないものの、でも一話みればもう十分という気がしている。以降は見ないだろうと思う。