
知人から古い芸術新潮を譲り受けた。昭和31年3月号と昭和33年10月号である。平成昭和の年号換算がパッと出来ないでいるから「およそ」で書くが60年前の雑誌。ちなみに芸術新潮ではなく「藝術新潮」と表記されていて、サイズもいわゆる美術手帖の大きさ。現状より一回り小さく、分厚い。
サイズだけでなく、編集も現在のヴィジュアル重視のものとは違う。分厚さとサイズから岩波の世界をちょっと思い浮かべたけれど、当時はそんな「読み物」雑誌だったよう。中をペラペラとめくってみればそうした印象がさらに強まる。読もうとすると、なにせ60年前の書物だから漢字表記がいまと異なり、例えば「絵画」は「繪画」と書かれているなど書体の小ささつぶれ具合と合わせて読み辛いところだけど、なかなか興味深くて、空き時間に少しずつ目を通しては愉しんでいる。
読み物という観点でいうと面白いのが、いまだと週刊現代とかの週刊誌メディアが書くようなゴシップ的な記事もあることで、昭和33年10月号の小特集は「美術界のダニ」とある。「日展騒動の黒幕」と題され実名入りで書かれた署名原稿があり、“画家の血を吸う人々”やら“黒幕登場”などとやたら週刊誌的な小見出しがつけられ、黒幕だと名ざしされた某氏の反論原稿1ページを含め14ページに渡ってそんな特集がなされていたのであった。


目次はこのような感じ。クレジットを見たら、このページのカット絵は斎藤義重で、いちいちそんなところに目が留まる。
ところで最新の、いま書店で売られている2019年2月号の「芸」術新潮