
長岡市内で開催されている二展を昨日は廻る。長岡駅からは両展ギリギリ徒歩圏内であろうか、maison de たびのそら屋での「田中幸男個展」とギャラリー沙蔵での「佐藤昭久個展-時の記憶-」。まず掲げた画像は田中幸男展のほう。

キャンヴァスにアクリル絵具でのいわゆる平面絵画も飾られているが、幾何学でいう三角錐の集まりによるレリーフ作品があって目がとまる。このギャラリーでの前回の氏の個展(2019年)の際、レビューというよりも単なる感想みたいなところではあるが数学について記していたことを思い出した。
佐藤昭久展は、ここ15年間くらいに出展した展覧会(主には「戦争と平和展」「国際メールアート展」といったテーマ展)の作品を1階空間に並べ、「時の瓶詰め」と称し作家コレクションの如く瓶に入れられた“もの”と含め、タイトルにもなる「時の記憶」というテーマが浮かびあがる。
氏は私の認識では「絵画」を追求する作家であり、作家自身もやはりそのように言った。その意味では会場に立体作品が多いことに気づくが、テーマ展が大きな空間で与えられたときには立体を手掛けることもあり、その(15年くらいの)蓄積 を面白くみるわけだ。ちなみにここ15年くらいの作品ということではちょうど10年前に氏の個展の展評を新潟日報紙に寄稿したことがある。田中展と同様に、観ていたら過去の記憶が頭に浮かんだ。



↑は2019年ギャラリー湯山「国際メールアート展」に出展された作品で、図抜けた傑作と思う。鯨を描いた絵を(粗紐でくくっただけで絵が見える状態のままに)郵送したメール・アートは作家居住地の魚沼市湯之谷からまず中国(の協力者宛て)に送られ、そこから上越市の展覧会事務局に向けて郵送搬入している。片面には魚沼→中国の宛名に切手と薄緑色の税関告知書が貼られていて、裏面を見ると中国→上越への宛名と(当然だけれど中国の、意外とカラフルな)切手。つまりこの1枚両面それぞれにはメールの行為や記録をも残していて、かように海を渡った“鯨”はメールアートとして完結している。


実際これをやろうとしたときに、中国の郵便当局に対してこの行為はアートであること、どういうアートなのかその目的と意味の説明文書を作ったりなど苦慮があったと、在廊していた作家から説明を受けた。作品内にはうつらない背景だったり苦心があるようでそこも興味深いところ。また2階の喫茶室では今年制作の和紙+油彩による小作品群の展観。
田中幸男展/10月15日~23日、maison de たびのそら屋
佐藤昭久展/10月21日~25日、ギャラリー沙蔵