ということで氏のレビューの3つ目がようやくのアップとなる。執筆順に載せていくわけではないので前回の2003年2004年から少しとび、2009年。
「舟見倹二の軌跡展」と称されたもので、美術家舟見倹二(1925-2020)が1975年まで発表していた「油彩作品」とそれ以降に始める「シルクスクリーンによる版作品」の二つをそれぞれ、新潟県中越地域の2会場に分けて(ほぼ)同時開催したという展覧会。シルクスクリーンのほうは1977~1983年の初期のシリーズに絞っており、総体として「変容する抽象表現1955-1983/油彩から版画へ」とサブタイトルがつく。
油彩のほうは見附市の今井美術館、シルクスクリーンの版作品は長岡市のギャラリー宮本での開催である。
深化させたゆるぎない思考 舟見倹二の軌跡展~油彩の変容から~
評:佐藤秀治 (美術家)
●2009年3月30日 新潟日報文化欄掲載

自身の長い表現活動のなかで、そのつど真剣に取り組んできた痕跡が、まさに等身大に重奏するテーマを今日に継承し形成している。繰り返し積み重ねた時間と技法、暖めたり、つきつめたり、解体したり、その結果として深化させてきたゆるぎない思考が、作り手の存在証明となっている。自らの表現がそれぞれの時代とともにどのようなものであったかを確かめたいのではなかろうか。鑑賞とは他者である作者の思いにこころを重ねる行為である。何より楽しみたいのは仕掛けた本人であり、その意図を探りながら是非追体験したいものである。
二十五年間の抽出した抽象作品群はその変遷で、幾度となく作風は変容した。しかし、それは色調や技法が表面的・視覚的に変わり見えるのであり、一人の作家が生み出した作品である以上、当然その根底には脈々と個的な本質は生き続けている。舟見は今、油彩の艶と感触を再認識し、画面と格闘した自由な精神と醍醐味を味わおうとしている。作家として、よりビュアになること、そしてそこからまた新たな手探りを始めること、それが本展に込めた願いであるといえよう。

余談のように書いておけば、上の展覧会案内のデザイン・制作はアトリエZen