
情報紙に長岡造形大関連の記事を書いていたときは卒展を数日かけて観る(取材する)こともあったけれど、今回は特に時間も限られているし、ある程度サっと見るつもりで入ったが、まず入口冒頭の院生(光延咲良さん)の作品に引っかかる。
金属板を溶接し箱状に連続させて長く構成したものを、入口ホール(屋内)とホール手前の屋外に対称させるように置く。屋外のほうは雪に埋めたのではなくて、設置だけは2週間ほど前にしていて、その後の降雪によって自然に隠れていく(日々変化していく、あるいは豪雪になれば完全に埋まりながらも雪が梱包する微細な“かたち”で存在をアピールする)ことを狙ったようだ。ちょうど作者のかたが作品近辺に居て、その佇まいがひじょうによかったこともあってつい声を掛けてしまったら、私が3年前に企画した鉄彫刻展に来場されていたかたとわかり、要は初っ端の第一作品から時間を費やしたわけである。
そのすぐ隣の比較的広いギャラリースペースでは、監視員当番をしていた学生が昨年ボントーンに作品を展示した学生(藤森ゆうかさん)で、またそこでも作品説明を丁寧に受けたりで話が弾む。藤森さんは七宝作品で、作品そのものも綺麗なのだが、背景となるコンクリート打ちっ放し壁を巧みに生かした「展示」の綺麗さも秀逸。小さい作品でさりげなくおさめているから一般には気づかれ辛い部分だが、展示経験の多い人が見ると(難しさを知っているから)ちょっと驚く。
サっと見るつもりがそんなかんなで最初から時間かかっていたが、きわめつけが標題にも入れた「なぜそこに“たばこ”屋が」である。長い廊下にそれぞれの研究のパネルが展示されるなか、上の画像のように設置されたタバコ屋恒例袖看板には、たばこ“屋”の観察マニアとしてはもう当然のように、遠方からでも「あれはなんだ!!」「なぜそこに?!!」と反応する。
「街角のたばこ屋さんを訪ねて-たばこショーケースの意匠と地域性に関する研究-」(柳珠実さん)で、建築・環境デザイン学科の「環境計画保存コース」での研究となるようだ。私にはドツボで、たばこ屋観察が大学の卒論になったのねと感慨深く、そこに置かれた論文と、論文よりも分厚くまとめられた「付録」の写真記録集も拝見したわけだ。
論文にはたいてい末尾に参考文献一覧が記される。かつて博士課程の研究論文に私がマイスキップに書いた現代美術の記事が(特に事前に知らず)参考文献等に記されていたことがあったなと思い出し、マイスキップ2018年4月号の企画特集で私の書いた「街角のタバコ屋を巡る」が今回も出てきたらどうしようと思ったけれど、要らぬ心配。そんなものは出るわけはない。
自宅に戻り当該2018年4月号の記事をみたら、なんだかエッセイを気取り過ぎていて(いま読むと)どうもよろしくない文章で、研究論文とはえらく違い過ぎる。でも柳さんの撮った写真と私のそれと、同じところを狙ったものもけっこうあって、やっぱり鳥越商店の店頭ショーケースにはいくよねーなんて言いながら面白がっている。
下の画像は冒頭に書いた、雪自体も要素に組み入れて対称展示した屋外作品。


[後日談(雑談の追記)]2023-03-12 タバコ屋研究その後
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